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尾木ママ語る!「コロナ時代を生き抜くチカラ~多様性を生かす通信制教育~」②IQからHQへ、学歴社会から学習歴社会へ

9月24日に行われたNHK学園での尾木ママ講演会のお話をシェアします。

日本のオンライン教育の現況

コロナ禍で子どもたちが受ける精神的なストレス、そして、経済状況の悪化のしわ寄せ…では、学校はどうなっているか。今、学校クラスターが全国で60人規模、100人規模で起きています。学校の校舎の中には入れない、休校だとしても「学びは止めない」というのが国際社会のルール、合意になっています。OECD(経済共同開発機構)が「オンライン教育の整備をしてください」という発信をしたのです。
日本国内でもタブレットが95~96%配布されるというところまで来ました。でも、タブレットがあればオンライン教育ができるということではありません。2021年9月時点の調査で活用できているのは小学校で30%。中学校でも30%です。タブレットは100%近く配布されているのにつかいこなせていないんです。
町田市では、小学校6年生がタブレットに悪口を書き込まれたことを相談しました。昨年9月に当事者同士で話し合って仲直りして、解決済みと学校は報告していましたが、実際は解決しておらず、親が相談しても聞き入れられずに自殺してしまいましたよね。今大問題になっています。
国が進めているギガスクール構想を導入した現場で、タブレットを通じたいじめが起きたり、授業中もゲームをしているというようなことが起きています。なぜ、こんなことが起きているか。学校の先生方がその中に入っていくということができていなかったのです。

増える「行きしぶり」と「多様な学習の場」の確保

今、不登校の生徒は全国で18万人います。そして今学校への「行きしぶり」という言葉を使うようになっています。行くのをしぶっている子、「行きしぶり」の生徒は日本財団の調査で全国で33万人います。合わせて51万人。それだけ大量にいるんです。
2016年12月には教育機会確保法が成立しました。どういう法律か、翻訳すると、学校に行かなくてもいいよ、休むのも子どもの権利だよ、ということです。その代わり、通信制とかフリースクールとか、いろんな多様な学びの場を社会として、国家として保証しましょう、という法律です。
この法律を巡っては、不登校率を上げることになるという意見もありますが、それは間違いです。この法律の目的は子どもたちの「学校への復帰」ではなく、「学習の場の確保」です。
先日、自民党の総裁選挙候補者による子ども政策についての討論会がありました。ある候補者が、「不登校率をどう下げるかという議論がある」というお話をされたので、「子どもたちを学校にしばりつける」という主張をされるのかな、と思いましたが、「それは間違いである。卒業させることが最大の目的ではなくて、その子の学びの場を多様に確保することが大事。」とおっしゃったのでほっとしました。そして、候補者全員が子ども関連の国家予算を倍にすべきだと言っています。忘れないでもらいたいです。

IQの時代からHQの時代へ

教育においては、「多様化」が一つのキーワードです。その中で、学びがどうなっていくのかについてお話したいと思います。

IQ(Intelligence Quotient、知能指数)の時代はもう終わりました。AIが日常に入り込んできたことで、IQからHQ(Humanity Quotient、人間性知能)が問われる時代へ。これからはHQの時代だと脳科学者たちは言っています。スマートフォンで調べればわかるなら、知識量の多さは重要ではなく、人間力の高い人の重要性が高まるというわけです。なぜならロボットは豊かな心、感情を持っていないからです。

アフガニスタンではカブール陥落の随分前からアルカイダによって地方の女子校は閉鎖されました。軍事拠点にするためです。子どもは学校に行けないんです。今、戦場では、無人ロボットやドローンが殺戮に使われています。HQの低い人がAIを用いるようになってしまったら、そうした無人の道具を人を殺すために使ってしまう危険性があるのです。問われるのは人間性、AIを使いこなせる人間力です。

世界の常識・日本の常識

日本では、卒業が1年遅れた、2年遅れたということを気にするけれども、世界では当たり前なんですよ。
日本の大学1年生の平均年齢は18歳。では、世界の先進国の平均はご存知ですか。答えは22.3歳。日本は4歳も早いのです。3月に卒業して、4月の5日ぐらいには大学あるいは専門学校の入学式に出ている。海外では、そんなことできるわけがない、と捉えられます。

他の国では、高校を卒業してから2、3年世界を旅行してみたり、あるいは、インターンシップを経験したり、働いてみたり、ぼーっとしたりする中で、自分は何がしたいのかな、世界はどうなっていくのかな、ということを考えて、3,4年後に「あ、自分はこれをやりたかったんだ」というものが見つかって、大学や専門学校に入学する。あるいは40歳で課長になったのを機に2年間ぐらい勉強したい、と学び直しのために入学するという方もいます。こういうことが国際社会の中で言えば常識なんです。でも、日本では高校出たらすぐにいわゆる「ブランド大学」をめざして入って、それで何者になるというのでしょうか。

学歴社会から学習歴社会へ

学歴を競うのはもう終わりです。サイボウズの青野慶久社長は、「学歴は一切問わないで学習歴を大事にする」、「学歴社会から学習歴社会にならないと日本はだめになる」、というのが持論です。ご自分も社長でありながら、学生です。どうして社長業と学生が両立できるのかと思われるかも知れませんが、今や東大も、ハーバード大学も、オンラインで授業を受けることができるんです。幅が広がってきました。留学しなくても、日本にいながらにしてどれだけでも勉強していける。本人の意志次第でどんどんスキルアップし、人生を深く考えることができるんです。現代はそういう優れた時代です。みなさんもひしひしと感じていることだと思います。


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