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well-beingって何ですか

 チーム「うぇる・び」のnote担当、河合良樹です。私は、地理Bの科目担当と毎週水・木・金曜日の週3日登校する登校コースの2年生23名のクラス担任をしています。
 「その人らしさを育むこと」を大切にするNHK学園高等学校において、これまでのウェルビーイング教育をさらに高めていくための研究中です。そもそもウェルビーイングとは何だろうか。私も、このデザイン・ラボに関わるまでは、馴染みのない言葉でした。今回は、ウェルビーイングについて調べたことを、みなさんにもお知らせします。

well-beingって何ですか

 初対面の人と出会うとき、その人の名前や身にまとっている衣服、装飾品、声の大きさや高さ、そして表情や使う言葉からイメージを膨らませます。そうやってイメージを膨らませることができると初対面の関係から少し距離を縮められた気がして安心できます。ですが、初めて見たり聞いたりする言葉の場合は、そうはいきません。分かりそうで分からないときだとなおさら、かゆいところに手が届きそうなのに届かないモヤモヤが身体じゅうをめぐっていきます。ウェルビーイングって、何ですか。

ウェルビーイングを調べてみた

 デザイン・ラボの活動に参加する前は、ウェルビーイング(well-being)という言葉を見たことも聞いたこともありませんでした。wellやbeingという単語は英語の教科書で見たことがあるし、それとなく意味も分かるのに、2つの単語がひっついた途端にどういう意味なのか分からなくなってしまう人は多いと思います。
 そこで、ウェルビーイングについて気になったので考察をしてみました。英和辞典で「well-being」を調べると、「幸福,福利,安寧《健康や快適な生活による》」(『ルミナス英和辞典』第2版 研究社より)と載っています。幸福を意味する英単語にはhappinessもあります。happinessのhapが偶然を意味します。happinessの幸福の方には、背景に偶然性があります。一方でウェルビーイングの意味する〈幸福〉は、「健康や快適な生活による」ので、背景に意志があります。この違いからウェルビーイングという言葉に主体的に活動しているイメージができます。
 また、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』では、ウェルビーイングについて次のように説明しています。

ウェルビーイング(中略)とは、個人またはグループの状態(コンディション)を指す概念である。つまり、あるウェルビーイングが高レベルの時、その状態(コンディション)は良好であることを意味するようになる。あえてここで変な英語を変な日本語に訳すとウェルビーイングは「良好性」や「良好性状態」(ただし良好であるとは限らず)となる。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「ウェルビーイング」のページより)

 ここではっきりと説明していることは、ウェルビーイングが概念であるということです。ウェルビーイングが高レベルのときに、〈幸福〉を実現していると考えられます。また、「個人またはグループの状態」という説明からは、私個人の状態だけでなく、自分を取り囲むグループの状態もウェルビーイングに含んで考えていることが分かります。そのうえで、ウェルビーイングを「変な日本語に訳す」と「良好性」だと説明しています。

 カタカナ表記の言葉の中には、既存の日本語ではうまく表現できない新しい概念があります。こういうとき、あえて日本語に置き換えるよりもカタカナ表記のままの方が世の中に浸透しやすいです。日本語のかわいいという言葉が、海外ではcuteではなくkawaiiとして、さらには日本の文化として広がっているように、日本に新しく入ってくるカタカナ表記の概念も同様のことがいえます。

 『ウィキペディア』では、「変な日本語に訳す」と「良好性」だと説明していましたが、東京都市大学の坂倉杏介研究室が作成した『WELL-BEING ウェルビーイングな暮らしのためのワークショップマニュアル』では、ウェルビーイングについて次のように説明しています。

「Well=良い」と「Being=状態、あり方」を組み合わせた言葉で、文字どおり「良い状態」を意味します。(『WELL-BEING ウェルビーイングな暮らしのためのワークショップマニュアル』より)

 ウェルビーイングとは、「良い状態」のことだと説明しています。これまでウェルビーイングについてあれこれと考察してきたのに2つの単語を組み合わせた言葉だとシンプルに説明されてしまうと豆鉄砲を食らった鳩のようになってしまいます。ですが、シンプルに説明できるということはそこに至るまでに多くの試行錯誤があったということでもあります。本当に美味いラーメンも美しいメイクも完成されたものはシンプルに見えるということが多いですが、その過程で手間がかかっているという話はよくあるものです。ウェルビーイングとは「良い状態」という意味だというシンプルな説明も同じなんだろうと思っています。

 「良い状態」にしようと思うならば、まずその「良い状態」について考える必要があります。そうして「良い状態」について考えることで、実は私たちが当たり前だと思っていることの中にウェルビーイングがあったんだということに気が付いていくのだと思います。

 シンガーソングライターさだまさしさんの『主人公』という楽曲の最後には、「私の人生の中では私が主人公だ」(作詞さだまさし『主人公』より)という歌詞があります。〈幸福〉がウェルビーイングを実現している状態だとすれば、この歌詞のように自分の人生の主人公は私なのだと頭と心で納得することが、実現するための第一歩なのかもしれません。いいかえれば、ウェルビーイングを高めるためには自己肯定感を高めることが必要だということです。

 私たち「うぇる・び」では、NHK学園の生徒一人一人のためのウェルビーイングを「N学的ウェルビーイング」と題してウェルビーイングの概念を定義していきます。そして「N学的ウェルビーイング」を高めていくために、具体的な目標の設定とその実現に向けて活動していきます。