見出し画像

学校をどのように変えるのか?そのヒントをオランダで広がる教育法イエナプランに見つけました。

前回の「パーソンズ」の投稿を読んでくれた同級生から、さっそく反応がありました。高校2年生になる娘さんが昨年の3学期から不登校になり、通っている高校に行けなくなったそうです。夏には、大好きだった祖父の葬式にも参列できないほど元気がなかったそうです。今は通信制の学校も視野に入れ、転校を検討されているようです。早く元気になって欲しいですね。

さて、前回のnoteで、東京本校の登校コースから「学校を変えたい」ではなく、「学校を変えます!」と申し上げました。実のところ、NHK学園高等学校の創立の原点である「自学自習」に戻りたいのです。

NHK学園は1962年の創立当初から、働きながら学ぶ勤労生徒を受け入れてきました。もちろん、今も変わらず勤労生徒を受け入れていますが、減少傾向にあります。近年は勤労生徒に替わり、さまざまな事情を抱えた生徒が数多く入学してきています。生徒層も若年化しており、それに対応するために複数のコースを増設して対応してきました。

特に5年前に創設した東京本校の「登校コース」を担当するようになって、「学校を変えたい」という気持ちが強くなったことは、前回のnoteでお伝えした通りです。

どのように変えるのか?

私は、全国に置いている協力校、もしくは東京本校のベーシックコース(21年度からはスタンダードコースにコース統合)をお手本にしたいのです。協力校には、NHK学園高等学校の創立の原点である「自学自習」が残っています。

協力校は、全国に32校あります。各協力校の生徒数は1校につき少ないところで10名〜20名、多いところで100名を超えます。ちなみに私の担当する宮城県仙台大学附属明成協力校(月に1回〜2回ほど校舎をお借りしています)は53名です。

東京本校のベーシックコースは、土曜日生、日曜日生、月曜日生、火曜日生の4つの縦割り集団があり、協力校と同様の形態をとっています。

どの協力校も月に1回〜2回のスクーリング(登校)を行っています。スクーリングでは、中心となる指導部長、そして担任や科目担当やカウンセラーが全員一つの教室に待機して生徒の面倒を見ます。そこに生徒が次々に登校して来ます。単位制なので登校時間もバラバラです。自分の受講すべきスクーリングが終了すると、先生のいる教員室に戻って来ます。そこで長々とお喋りをしてなかなか帰らない生徒もいれば、そそくさと挨拶をして下校する生徒もいます。

規模の小さい協力校にも東京本校同様に、「生徒会」や「学習グループ」が存在します。「生徒会」は年に数回ある行事を自分たちで計画しています。遠足や運動会や卒業生を送る会など、どの行事も心温まる手作り感満載の企画ばかりです。

私が担当する明成協力校では、昨年度の2月に「卒業生を送る集い」を新たに企画しました。NHK仙台放送局の会議室を借りての実施でした。実施までの準備は生徒会役員がそれぞれの都合をつけて「まなびや仙台」(NHK学園が仙台市内にある生徒の学習・相談のための施設)に集まり、閉室ギリギリの時間まで、話し合いを重ねました。室内のレイアウトを決めたり、3年生を中心に全員が楽しめるゲームの企画や、景品や必要な小物や材料の買い出しなど、全てを生徒がやってくれました。当日は、私も参加しましたが、とても和やかでアットホームな雰囲気で楽しむことができました。

「学習グループ」では、スクーリング以外の日に近くの「NHK放送局」や「まなびや」(NHK学園の施設)もしくは公民館などに集まり、みんなで教えあってレポート作成や試験勉強に励んでいます。学習グループは卒業生の活躍の場でもあります。現在でも協力校によっては、昔ほどではありませんが、先輩(卒業生)が後輩(在学生)に勉強を教える風景を見ることがあります。

そうした協力校の魅力は、1つのチームとして動いていて、学年の壁が低いことです。様々な年齢層の生徒が存在し、生徒と先生の距離感も近く、お互いがお互いを思いやりながらスクーリングや行事を実施しています。決まった日にスクーリングや試験をこなせない生徒には、指導部長の先生が個々に対応してくださいます。この協力校スタイルを東京本校の「登校コース」に導入することで「学校を変えたい」と思っています。

その時のキーワードが「縦割り」です。そこで、世界の教育手法の中でも、学年という概念を取っ払い「縦割り」感の強い教育手法で成功を収めているオランダの「イエナプラン」を紹介したいと思います。

イエナプランは、1924年、ドイツにあるイエナ大学の教育学者、ペーター・ペーターゼンが同大学の実験校で始めた教育モデルです。このイエナプランを積極的に取り入れ、発祥国のドイツを遥かに凌ぐ勢いで発展しているのがオランダです。オランダは憲法で教育の自由を保障しているため、他国の教育手法であっても自由に取り入れることができます。そうした背景もあり、1960年代に初めてイエナプラン校が設立されて以来、急速に普及してきました。現在オランダにある学校のうち10%がオルタナティブ教育を実施しており、そのうち約3割に該当する200校近く(オランダ全体の3%に相当)が、イエナプランを取り入れています。

イエナプランには、自分の良さや弱みを知るだけでなく、他者の良さを認め、社会で協働して積極的に活動できる大人を育てるという狙いが非常に強くあります。ですから、生徒が障害を持つ持たないに関わらず、みんなが同じ環境で協力しながら学びの生活を送ることを基本としています。

大きな特徴は、学年(年齢)の違う子どもたちを混合して編制する学級です。イエナプランでは、三学年混合のグループを「根幹(ファミリー)グループ」と呼んで、学校での様々な活動の基本的な単位にしています。(中略)
根幹グループでは、子どもたちはそれぞれ、年少・年中・年長の三つの立場を順に体験することになります。それに伴って子どもたちは、教えたり助けたりする立場、教えられたり助けられたりする立場というような役割を、交互に体験することになります。
イエナプラン教育では、対話、遊び、仕事、催しの四つを基本活動と呼び、学校では、これらの四つの基本活動が、リズミカルに循環しながら行われていることを目指しています。(中略)「仕事」は、いわゆる労働のことではなく、ここでは、子供たちがそれぞれ自分に与えられた課題を達成すること、共同で課題を行うこと、つまり、自立学習や共同学習を意味しています。
『オランダの個別教育はなぜ成功したのか―イエナプラン教育に学ぶ』(平凡社)より

日本でもこの「イエナプラン」を実践している学校があるようです。興味のある方は、ぜひ検索してみてください。

最後に私の呟きです。NHK学園東京本校には部活動があります。私が顧問をしている「陸上競技部」は登校コース生だけで20名を超えています。登校コースに「陸上競技部クラス」ができれば面白い「縦割り」教育ができるのかなあと思っています。通信制だから出来ることを引き出したいのです。

例えば、時間割の中に部活動の時間を取り入れたり、学習グループのようなレポート作成時間を設けたり(現在もレポート作成時間を設けていますが、縦割りではなく、チューターを配置しています)、そこでは先輩が後輩に勉強を教えあったり、遊びの時間があったり、仕事の時間があったり(同じ職場でアルバイトをしている生徒もいます)、多様なプログラムを準備できると思います。

次回は国内の「縦割り」教育手法を紹介したいと思います。