「よりみちカフェ」活動報告会を開催しました
NHK学園東京本校では、2022年5月から「よりみちカフェ」を開催してきました。生徒の居場所、ホッとできる場所として気軽に立ち寄ってくれたらいいな、という思いのもと、主に本校の図書館で開催してきました。
月4回のペースで開催してきた「よりみちカフェ」の取り組みについての活動報告会を12月14日にNHK学園東京本校で開催しました。
よりみちカフェ報告
報告会では、NHK学園でよりみちカフェを担当している教員と、かかわってくださったボランティアの方から活動報告を行いました。
体育館前の休憩スペースで行ったテスト開催(テスト開催の様子はこちら)には、たくさんの生徒が集まり、5月に今年度初回カフェを開催。以降、登校コースの登校日に2回、スタンダードコースの登校日に2回、と月4回のペースで開催してきました。多い時には50人近くの生徒が集まり、平均すると30人前後の参加です。ボランティアさんも毎回7人前後参加いただいてきました。
生徒の利用のしかたも、スタンダードコース生は一人で来て、静かに遊んでさっと帰る生徒が多いのに対し、登校コース生は友だちと来て、ワイワイとアクティブにしっかり遊んで帰る生徒が多いようです。登校コース生は1年生が多いのも特徴です。
よりみちカフェには、いつもボードゲーム等が置いてあります、こうしたゲームや共通の趣味の発見を入り口に交流が始まり、社会性を身につけていく機会となっているようです。普段は出会わない異質な生徒同士の出会いを支えてくれているのが、ボランティアさんの存在です。ボランティアさんからは、ボランティアのみなさんも自由に過ごしていて、何よりもボランティアさんたち自身がよりみちカフェを好きなことが、全体の雰囲気を作っているのではないか、というお話がありました。「知らない人だからこそ、悩みを打ち明けてくれるのではないか。」というお話もありました。
「よりみちカフェ」でのもう一つの発見は、生徒たちの持つ力です。特に、イラストの好きな生徒の多いこと!よりみちカフェの際には、置いてあるホワイトボードがいつの間にかイラストで埋め尽くされていて、その画力にはいつもびっくりさせられます。
校内居場所カフェってどんな場所?-NPO法人パノラマ・小川杏子さんのお話
校内居場所カフェの運営を始めとした若者支援を行うNPO法人パノラマの小川杏子さんからは「校内居場所カフェってどんな場所?~地域の多様な大人がいることで生まれること~」というお話をしていただきました。
現在、日本全国には60強の校内居場所カフェがあるそうです。民間の助成金や行政からの委託により、さまざまな団体により運営されています。
小川さんが示してくださった「よこはまサポートステーション」への相談者のグラフを見ると年齢層の中心は20代から30代前半にあることがわかります。義務教育が終了する高校生(=ハイティーン)になると、地域から見えなくなってしまう実態が反映されているとのこと。困難を早期に発見しサポートするために、校内居場所カフェで実態把握をすることが大切、というわけです。もちろん、どの自治体にも相談窓口はあるのですが、そもそも、「困ったと感じていなかった」「相談するべき内容だと思っていなかった」ということや他人に頼って解決した経験を持たない場合、「誰かに頼るという発想自体が浮かばない」ということがあり、なかなか利用に結び付かないそうです。より自然なかたちで他者に状況を話す機会を作ることが大切なのです。
そして、この信頼を構築し、課題の早期発見・支援につなげ、中退や進路未決定を予防するという目的のためには、「地域の人たち」の役割がとても大きいというご指摘がありました。
さまざまな意味で経験の少ない高校生たちの社会をひろげるのには、地域の人たちの果たす役割がとても大きいというのです。
具体的に以下のような役割が挙げられました。
・多様なロールモデルを示すこと
・地域の人たちの声かけによって生徒が「認められた」と感じること
・第三者の大人の意見を聞く機会を持つこと
NHK学園のよりみちカフェでも、この1年間に同じような出会いや機会がたくさん生まれたのではないかと思います。
校内居場所カフェって何がいいの?-神奈川県立高校元副校長・浜崎美保さんのお話
神奈川県立高校で副校長として校内居場所カフェ「ぴっかりカフェ」の運営にかかわってきた浜崎美保さんからは「高校の管理職の立場から見たカフェの意義やあり方について」のお話をうかがいました。
お話の冒頭、浜崎さんからは「ぴっかりカフェで一番人気のある飲み物は何だかおわかりですか?」と参加者に質問が。答えは「お味噌汁」。何杯もおかわりをする生徒が少なくなく、お昼を食べられない生徒の多さが浮き彫りになったそうです。ほかにも、「誕生日を祝ったことがない」「浴衣を着たことがない」「家でカレーライスを作ってもらったことがない」など文化的体験の少なさも見えてきたとのこと。生徒支援のしくみが整っていて、大変な生徒の状況は把握できていると思っていた浜崎さんでしたが、カフェを通して、自然なかたちで生徒たちの背景が浮き彫りになったといいます。
ここからカフェ内にさまざまなイベントが生まれるようになりました。
どのお話も実体験に基づいた内容で、高校生の置かれた状況について考えさせられる内容ばかりでした。文化的な体験の不足を補完することやさまざまなロールモデルを生徒に示すという点において、改めてボランティアのみなさんのような「保護者でも教員でもない大人」がかかわることの意義が示されました。
小川さんのお話からは、気軽な「カフェ」の場から、「相談」につなげることの難しさについてのお話もありましたが、NHK学園からは「よりみちカフェ」から進路相談につなげる「あすなろカフェ」への連携の例が示されるなど、来年度以降の活動についてのヒントもありました。
最後は、ボランティアのみなさんを中心に、浜崎さんや小川さんへの質疑応答。それぞれの方の真剣さと温かい心の感じられる内容でした。毎回30人前後の生徒が参加している「よりみちカフェ」。たくさんの生徒が安心して参加できるのもこうしたボランティアさんがいらっしゃってこそ、です。
今年最後のよりみちカフェ
そして、報告会の数日後、今年最後のよりみちカフェが開催されました。みんな思い思いに集まって自分のペースで楽しんでいます。
この日もホワイトボードにはたくさんのイラストが描きこまれていました!こうした生徒の魅力、持ち味を活かして、何か楽しいことができないかな?と、現在試案中。
来年度もNHK学園の「よりみちカフェ」、進化していきます!
※今年度の「よりみち」カフェは、国立市公民館とNHK学園高等学校の共催事業「子供・若者地域参加サポーター養成講座」の一環として実施しています。