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通信制高校は初めての新任教員がNHK学園の生徒たちの様子や感じたことを聞かせてくれたら、そのウェルビーイングな学校生活が見えてきた

2020年4月からNHK学園で保健体育科の非常勤講師を務めている速水舞先生。北欧へ留学予定でしたが、コロナウィルスの感染拡大により延期となり、大学院に籍を置きながらNHK学園で指導することになりました。
通信制高校は何から何まで初めての速水先生のフレッシュな目で見たNHK学園高等学校の生徒の様子やそこから感じたことを聞かせてもらいました。

※速水先生は現在、スウェーデンのヨテボリ大学教育学部、人文学部に留学中。国際的な視野から持続可能な開発について、文化的視点をもとにジェンダーや家族について学んでいます。

全日制高校で過ごした自身の高校時代との比較には、「なるほど」と思わせられることがたくさん!高校への進学や進学先を考える際のヒントにもなるお話です。

コロナ禍でも通常運転

コロナウイルスの感染が広がる真っただ中での指導開始。スクーリング(登校)を中止していた時期でもあり、戸惑いも多かったのではないですか。
速水:はい。通常であれば、5月ごろには新学年での初スクーリングがあり、生徒たちはクラスメイトと初めて出会い、担任や教科担当とも直に顔を合わせます。私も生徒との対面を楽しみにしていたのですが、6月までは生徒と会えない状況が続きました。
まず驚いたのは、そのような状況下でも通常と変わらず授業やホームルームがオンラインで進行する様子でした。平常時でもオンラインの学習が基本に組み込まれているので、緊急事態宣言の影響は非常に少なかったと思います。とは言っても、直接生徒と会うことができないのは非常にもどかしかったです。

“自然体”の生徒たち

登校が始まって、普段のNHK学園を見て感じたことはありますか。
速水:登校は週に3回の生徒もいれば、月に1回の生徒もいます。複数のコースがあり、自分に合ったスタイルで高校の単位を履修することができます。生徒はアルバイトをしたり、資格取得のために勉強をしたり、一人でゆっくり過ごしたり、と、自分の興味関心と向き合う時間が非常に多いです。
からだや心に不安を抱える生徒に対しては、教員が工夫や配慮をしながら対応を行なっているため、生徒も自分のペースで学校生活を送ることができている印象です。友達と会いたい時は会う、学校を休みたいときは休む、NHK学園の生徒はある意味“自然体”です。

自分を見つめる余裕のなかった高校時代

自身の高校時代はどのように過ごしていましたか。
速水:高校時代を振り返ると、行事や部活動、試験に追われる日々で、余裕を持って過ごした時期がほとんどなく3年間を終えたという印象です。特に部活動(陸上競技)の練習に時間を割くことがほとんどでした。
今思い返すと、全てに全力投球で頑張るのが当たり前という環境でした。人それぞれ目標や夢があり、それに向かって取り組んだ時間はかけがえのない経験です。しかしながら、いつしか、大会で良い記録、順位を取ることが目標になり、陸上競技を心から楽しむことができなくなった自分がいました。時には、結果が出ない自分を責めることもありました。目先の結果ばかりで、本来の目的を見失っていたと、改めて思います。今思えば、本当に好きなことは何か、自分の興味関心はどこにあるのか、もう少し余裕を持って自分を見つめる時間が必要でした。
毎日学校に通い勉強、部活動など多忙な日々を送ることが当たり前だと思っていた私にとって、NHK学園の学習スタイルは新鮮です。

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自分で判断、選択すること

高校生は、大人になる一歩手前。自分はどんな人間で、どんなことが好きで、どんなことが得意なのか。そんなことを考える大事な時期ですよね。本来は、そうした「自分を見つめる時間」を経て、「もっとこういうことを勉強したい」とか「こういう仕事が向いているのではないか」という自分なりの進路が見えてくるのでしょうね。
速水:NHK学園の生徒の大学や進路の選び方は、自分が何をやりたいかが最優先です。一般の評価が高いからとか、難易度が高いからとかではなく、「興味のある分野に強いのはあの学校だから」といった理由で、進学先を選んでいると感じます。自分の意思で判断ができるからこその選択です。
また、NHK学園の生徒は素直で、自分が納得できない時は、ダイレクトに質問してくれます。私が高校生の頃は先生の顔色を伺ってばかりで、思ったことを口に出せる機会が少なかったかもしれません。もちろん個人差はありますが、そうやって自分の主張を大人に伝えられるのは素晴らしいことだと思います。

自分の気の赴くまま生きる気持ちを大切に

「他人の意見に流されずに自分の考えで選択をする。」これは、大人でも難しいことです。でも、そうでなければ新しいことはできないですよね。生きていくのに大事な力です。
速水:私は「週5日の登校や勤務が当たり前で、常に努力し続けなければならない」という枠組みを知らず知らずに作っていましたが、NHK学園で生徒との関わりを通して、もっと自分の気の赴くままに生きる気持ちを大切にしても良いのではないか、と考える貴重なきっかけを得ました。
「時には休んでも、また頑張れば良い、人生は長いから。」
NHK学園での経験で、私自身の意識がそんな風に変化しました。教えるという経験以上に、私にとって大きな経験です。
私は現在大学院に通っていますが、そこには20代から定年を迎えた60代の方まで幅広い年代の学生が在籍しています。学びたいと思って勉強することに歳や時期は関係ないと感じます。
そういった意味では、さまざまな年代の生徒が学びなおしができるNHK学園のような環境は魅力的です。今後も、生徒との関わりを通じて、一方通行ではなくお互いに学び合えるような関係でありたいです。


コロナウィルスの広がりにより、在宅勤務や遠隔地勤務、ワーケーションなど、硬直的だった日本人の働き方も変化してきています。今の高校生が大人になるころには変化は加速して、さまざまな生き方、働き方の人々がパッチワークのように組み合わさってものごとを進めていく時代になるはず。もしかしたらそんな時代の変化を敏感にキャッチした生徒たちが、NHK学園に集まってきているのかもしれません。

「自由な高校生活、はじまってます! NHK学園在校生・卒業生によるケーススタディ」には、さまざまなの生徒インタビューを掲載。合わせて読んでみてくださいね。


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