スクールカウンセラーへの相談がきっかけで 開けた大学進学への道
来春から筑波大学情報学群に進学が決まった堀口楓佳さんは、NHK学園Doitコース(2021年度よりライフデザインコースに名称変更)の3年次生。春からの新生活に向けて期待に胸膨らむ堀口さんにNHK学園高等学校広報の野村がお話をうかがいました。
人工知能の研究がしたくて筑波大学へ
野村:大学合格、おめでとうございます!筑波大学へは推薦入試での入学とうかがいました。どのような選考だったのですか。
堀口さん:書類と面接と英語の小論文です。小論文とは言っても、英文で数学の穴埋め問題が出題されているなど、みなさんがイメージする「小論文」とは違うと思います。
野村:それは数学の力が問われる「小論文」ですね…。具体的には、どのような勉強をしたいと思って情報学群を選んだのですか。
堀口さん:人工知能(AI)に興味があるんです。音楽情報学や自然言語処理に特に惹かれています。自動演奏や自動伴奏でより人間らしい演奏をさせるとか、楽曲の検索システムの構築、より自然な機械翻訳やその文章を書いた人がどのように思っているのかということを読み取る術を獲得する…といったような研究がしたいです。
聴覚過敏で小学校から不登校に
野村:数学は以前から好きだったのですか。
堀口さん:はい。数学は好きで、小学校の時から中学校や高校の参考書を見て勉強したり、数学の本を読んだりしていました。
野村:独学ですか!それでは、小学校の算数は心配なしですね。
堀口さん:実は、聴覚過敏で騒がしいところが苦手なんです。ですから学校にいることが苦痛で、小学校1年生の時から学校を休みがちでした。行こうと思っても、とにかく教室が嫌で行く気になれなかった。
小2からはほとんど学校に行けず、フリースクールに行ったり、別室登校をしたりしていました。地元の公立中学校に入学しましたが、登校したのは入学式だけだと思います。中学生時代は、ほとんど家にいました。
英語も好きで、中学校に入る頃から勉強を始めました。参考書のほかにCDのついている学習書を使ったり、NHKラジオの「基礎英語」なども聴いていました。おかげで高校1年生の時に英検準1級、TOEIC730点が取れました。
野村:今回の筑波大学の入試も、得意分野という感じですね。
勉強以外には、どんなことをして過ごしていたのですか。
堀口さん:ピアノをずっと習っているので、ピアノを弾いたり、ファッションやメイクも好きで、楽しんでいました。
午後からの登校や登校日数が入学の決め手
野村:高校にNHK学園を選んだ理由は?
堀口さん:高校は通信制か高卒認定試験のいずれかに決めていました。自宅が和歌山なので、大阪の通信制高校の合同説明会に足を運びました。進学コースで探していたのですが、朝からの登校は和歌山からではきつくて、断念。
NHK学園のDoitコースの説明を聞いて、不登校生を対象としたコースということで行きやすいことと、登校が少なすぎず多すぎず、程よいことで入学を決めました。
野村:堀口さんが通っている大阪夕陽丘学園協力校ですと、Doitコースは午後からの登校ですものね。和歌山からでも、余裕をもって家を出られますね。
NHK学園へ入学してみて、いかがでしたか。
堀口さん:最初は緊張しましたが、慣れてからはストレスなく通うことができました。先生方がフレンドリーで、周りの子も落ち着いているので騒がしさはなく、教室に入ることが苦痛に感じることはなかったですね。
先生方は想像していたより、こまめに話しかけてくれてうれしかったです。話す内容は、勉強の話というより他愛もない話ですね。1年次生の時は、用事があった時以外は全ての登校日に登校し、1年間で8回登校しました。
進学を決心したスクールカウンセラーとの出会い
野村:この3年間で印象に残っていることは何ですか。
堀口さん:学習では、みんながチャットで参加する「メディアコミュニケーション」が面白かったです。みんなで何かをやるということが少ないので新鮮でした。
一番大きかったのは、3年次生になって、進学のことで悩んでいるときに、スクールカウンセラーの方に話を聞いてもらったことです。中学の時から、大学に進学したいという希望は強く持っていたのですが、今の自分が通学制の大学でやっていけるのかどうか、自信もないし、判断もつかなかったんです。
そこで思い切って相談をしてみたら、「通学制の大学でもやっていけるよ」と背中を押してくださって。受験してみようという自信が出ました。
それ以来、いろいろな話を深く聞いていただいて、本当に大切な出会いです。
野村:相談はスクーリングの時にするのですか。
堀口さん:はい。スクーリングの時はほぼ毎回いらしているので、相談はほとんどスクーリングのときにしていました。
高校と大学の相談室の連携による安心感
野村:春からの新生活。期待と不安とどちらが大きいですか。
堀口さん:楽しみな気持ちの方が大きいです。Doitコースでは授業を一緒に受ける経験が非常に少ないので、グループワークが楽しみですね。
自炊をして、好きなものが食べられるのも楽しみです。引っ越しまでに母に料理を教えてもらう予定です。
野村:この1年で大きな自信を得ましたね。
堀口さん:カウンセラーの方が、大学の学生相談室に連絡をしてくださることになっています。そうしたバックアップもあって、安心感をもって大学生活を始めることができます。
野村:将来の夢はありますか。
堀口さん:研究者になりたいです。先ほどお話した人工知能の研究にほかにも、情報系の専門書の翻訳は少ないので、翻訳の仕事もしてみたいです。
1つ1つの質問にはきはきと答えてくださる堀口さん。通学制の大学でやっていけるか不安を持っていた姿は想像がつきません。
NHK学園は、文部科学省指定の不登校経験者対象コースを設置していることもあり、総合教育相談センターの設置や、各地へのスクールカウンセラーの配置など、生徒のサポート体制に力を入れています。
カウンセラーは日々の生活の中での支えになるのはもちろんですが、進学など生徒の人生の大きな選択の支えにもなっているのですね。
堀口さんのように、自立して巣立っていく生徒の存在が、私たちNHK学園高等学校の教員・職員の活力の源です!