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新型コロナウィルスを機に加速する?一人ひとりに合わせた、脱一律・一斉・一方向型授業

新型コロナウイルスの感染が国内でも広がり始めてから、1年以上が経ちました。NHK学園でも感染を予防するため、試験も自宅からオンラインで受けさせるなど、極力登校させない措置を取り、これまで全く想像もできなかった状況を経験した1年間でした。
さて、一向に収束の気配すら見えない現状ですが、たとえ収束したにしても、以前の生活様式などには戻れないのでは、ともいわれています。

このことって、教育にもあてはまるのでしょうか。例えば、全日制はずっと毎日通学する形式のままなのでしょうか。あるいは、一律・一斉・一方向性の授業形態が変わるのでしょうか。現行の進級・卒業の考え方が変わるのでしょうか。

これまでの教育の考え方に問いを投げかけているものとして、「未来の教室」を紹介したいと思います。
簡単に表現すると、「未来の教室」とは、経済産業省が2018年から始めた教育関連事業で、ICTを活用して「時代の変化に合わせた新しい教育のあり方」を推進していこうという取り組みです。

ポイントの1つは”学びの自立化・個別最適化”です。
これを実現するため乗り越えるべき課題として、これまでの一律・一斉・一方向型授業を取り上げています。学習の進度や理解力は人それぞれ違って多様なのに、授業は一律に進められていることや、理解度や達成度を客観的に視るのではなく、決められた出席日数に到達したかどうかを重視して進級・卒業が判断されている、といった点に疑問の目を向けています。(詳細は、「未来の教室」ホームページ をご覧ください。) 

私がこのようなことに関心を抱くようになったのは、ライフデザインコース(旧Do itコース、2021年度より名称変更)という不登校や引きこもり傾向の強い生徒のためのコースの担任をしたことがきっかけでした。

入学してきたSさんは、持病の影響もあって授業中もすぐに疲れてしまい、座り続けることができず、中学校の間はほとんど登校できていなかったそうです。そんなこともあってか、塞ぎ込みがちでどこか自信がなさそうな印象を受けました。
NHK学園は、不登校経験のある生徒のための特別カリキュラムが実施できる学校に文部科学省から指定されている数少ない学校で、生徒は興味関心に応じて学習活動をある程度自分で設計することができます。Sさんは、自身の体調と相談しながら、4年以上かけて卒業を目指す計画を立てました。手先が器用なので、自宅でのアクセサリーなどの製作からはじめて、保護者の仕事の手伝い、さらには、社会との接点を増やす目的も含め、以前から入っていた地元の篠笛サークルへの参加など、自分に合った学習活動を進めていきました。
担任の私は、学習の進捗状況や必要なサポートを確認しながら寄り添い、Sさんの学習リズムができてくると、本人が自分で考えながら取り組めるよう、適切な距離感を意識して見守りました。
Sさんは、3年間で卒業しないといけないとか、他の人と同じ学習進度で進めないといけないといった圧力から解放されて、学習に関する心配を取り除くことができた様子で、体調も回復しました。最終的には、学校で教員から直接指導を受けるスクーリングにも皆勤で出席することができ、計画より1年も早く3年で卒業を迎えることができたのです。

そんなことを思い出していた時に、文部科学省の中央教育審議会(中教審)から、『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~』の答申に関する取りまとめが発表されました(2021年1月26日)。

この中で強調されているのも、多様な生徒一人ひとりに応じた学びの大切さです。少しずつかもしれませんが、確実に従来の教育が変わる兆しが出てきています。
先行きが不透明な社会情勢において、NHK学園がこれからの将来を担っていく生徒たちにどのようにアプローチしていけば、生徒ひとりひとりに合った幸せ、well-beingな状態を実現できるのかを模索しながら、新たな教育のあり方を発信できるよう、これからも取り組んでいきたいと思います。


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