見出し画像

「何でもいいから賞をとる」という高校生活での目標を達成 学校らしい学校だけどガチガチしていないNHK学園だから自分らしく挑戦できる

「インフォメーション・ヘルスAWARD 2024」(主催:NHK財団)で特別賞を受賞したNHK学園登校コースの長谷川 珂凛さん。応募アイデアは「義務教育における情報格差の解消」です。どんなアイデアなのか、アイデアを思いついたきっかけやNHK学園での学校生活についてなど長谷川さんに聞きました。


祖母を通じて考えた「情報格差」

――特別賞受賞、おめでとうございます。今回の応募アイデアは「情報Ⅰ」での学習がきっかけで思いついたのですか。
長谷川さん:授業での学びと自分のもともと考えていたことと半々です。「情報Ⅰ」は、誹謗中傷とかフェイクニュースなど体験したことがない内容にも目を向けるきっかけになりました。が、今回のアイデアそのものは自分が今までに考えてきたことから生まれた内容です。

――「情報格差」について、どんな思いがあったのでしょうか。
長谷川さん:私の祖母は聴覚障害を持っていました。そのため、税金の控除などを受けていました。実家にいたときはそれが当たり前だったので、母は実家を出て初めて税金のことを知ったそうです。この話を聞いて、知る環境がなければその情報に接する機会を得ないのだ、と強く心に残っていました。
コロナ禍では、祖母を始めとした聴覚障害の人たちは情報が回ってこないことに苦労していました。普段はネットで情報を得ることが多いのですが、耳で聞く情報がないので偏りが出てしまうのです。特にコロナ禍のようにさまざまな対応が刻々と変わっていくときには、ネット上の情報が追いつかなくて、情報が回ってこないのです。
今危ないと話題になっているリボ払いにしても、年金や税金のことにしても、学校で教えてその情報に接していれば、実際に直面したときの対応も違うと思います。

「情報格差を解消するための教育」についてのアイデア

――いろいろなところに情報格差が潜んでいる、ということですね。どんなアイデアで情報格差を解消しようという内容だったのか、教えてください。
長谷川さん:主な内容は3つです。1つめは「体験を重視した授業を全面的に導入すること」。自分が将来何をしたいのか、何になりたいのかも知識がなければ想像がつきません。小学校の頃から一定期間実際に仕事を体験する機会を持てるといいと思います。また、英語、韓国語、中国語といった言語も普段からその言語を使っている人に学べるとよりいいと思います。言語のみならず点字や手話も同様です。2つめは「生活する上で必要なことを専門家から直接教わること」です。人づての情報は少しずつ異なってきてしまう可能性があります。戦争の話も、実際に体験した人から直接聞くと重みがちがいます。3つ目は「多くの相談場所、居場所を持てるようにすること」です。具体的には、未成年に対して3人の相談者がつくようにすること。相談相手が1人では偏りが出てしまうし、性別や年齢、相性もあると思うので、3人ならバランスが良くなると思いました。また、家庭内以外の居場所が持てるように、申請すれば学校や学校に関連する施設等に宿泊できるようにできたらと考えました。

――アイデアをまとめるのにはどれくらい時間をかけましたか。
長谷川さん:メモに一度常日頃思っていたことを書き出して、それをもとに構成を考えたのですが、実際にパワーポイント7枚分にまとめるのは1日でした。

――パワーポイントがパステル調でとってもかわいらしいですよね。パワーポイントは小学校や中学校で使い慣れているのですか。
長谷川さん:高校に入ってから使うようになりました。生徒会で学園祭の金券作りの担当だったので、それから使い始めました。

高校生活での目標の1つは「コンテストで賞を取ること」

――生徒会に参加しているのですね。NHK学園での学校生活について教えてください。
長谷川さん:私は中学校の1年の夏休み明けから不登校になって、勉強をしていませんでした。英検だけは勉強して、3級は取りましたが、それほど英語力がついたとも思えなくて自信が持てませんでした。高校は全日制に通えるか不安だったので、週3日のNHK学園の登校コースを選んだのです。高校では、心機一転して、日々の生活を整えて休まずに学校に行こう、そして中学でできなかったことに挑戦しようと思って入学しました。
もともとコミュニケーションが得意な方ではないので、最初の2か月は何も話ができなかったのですが、ダンス部に入部したらクラスの子がいて、そこからどんどん友だちの輪が広がるようになりました。体育で同じチームになったり、イベントで仲良くなったり、友だちができるきっかけがたくさんあるのがNHK学園のいいところです。
高校入学後1、2か月してから、「大学に行けるようになる」という目標と、「3年間で何らかのコンテストに応募して賞を取る」という目標を立てました。今回の「インフォメーション・ヘルスAWARD」はその目標のこともあって応募しました。
実は、明日「超NHKのど自慢フェス」出場のためにNHKホールへ行ってきます。まさか「インフォメーション・ヘルスAWARD」で受賞できると思っていなかったので、目標達成のために応募していたのです。

「学校らしい学校」なのにいい意味で干渉されない

――目標達成のために積極的に活動していますね!高校を決める時には、他の学校も検討しましたか。
長谷川さん:はい。他の通信制高校も見ましたが、どこも線路の近くのビルの中で、毎日通うと言っても、授業を受けるのではなく単なる自由時間を過ごすような学校ばかりでした。私は勉強がしたかったので、「もっと学校らしい学校がいいな」と思っていたら、知人がNHK学園を紹介してくれたのです。スクーリングの見学に来てみると、授業もちゃんと先生が教えてくれるし、図書館も体育館もあるし、めちゃ「学校」。ここがいいな、と思ってNHK学園に決めました。

――入学してみて、いかがですか。
長谷川さん:やはり学校らしい学校で、青春が送れます。高校はそれが目的ではないけれども、学校らしい生活は今しかできないので、満喫したいです。それと、ガチガチしていないところが好きですね。校則も制服もないし、いい意味で干渉されないです。

大学に進学することがとても身近な学校

――いよいよ3年次です。進路についてはどのように考えていますか。
長谷川さん:以前は看護師など医療系の進路を考えていました。でも、レストランでのアルバイトの経験から、いろんなことが同時多発的に起こったときに瞬時に優先順位をつけて対処していくのが苦手だとわかり、向いていないと感じるようになりました。
授業の余談の中でいろいろな資格の話をしてくれる先生がいるのですが、その話も聞くうちに、法学系のことをやりたいと思うようになりました。1つ上の学年には指定校推薦で進学した先輩もいますし、部活動の先生にあこがれて先生の出身大学に進学した先輩もいます。先輩から面接指導の話も聞きました。NHK学園にいると、大学に進学することがとても身近です。周囲が自分の志望を決め始めている話を聞くと、「みんな考えているんだな」と私にとっても刺激になっています。

長谷川さん、改めて受賞おめでとうございます。そして、お話をありがとうございました。
後日、長谷川さんが「超NHKのど自慢フェス」でチャンピオンに輝いたとのお知らせを受けました!
歌った曲はAIさんの「みんながみんな英雄」。ステージで長谷川さんが語った「祖母は耳が聞こえませんが、私が歌うといつも褒めてくれます。母も忙しい時でも必ず時間を空けて聞いてくれます。そんな祖母は2018年に亡くなりました。前向きに生き続けた祖母に一生懸命な母。私の中の英雄にこの歌を届けたいと思い、選曲しました。」とのエピソードに審査員も涙していたとのこと。
「コンテストで賞をとる」という高校生活の目標を、ダブル受賞で文句なしの達成です。
3年次も有意義なNHK学園生活を送ってください。

会場はNHKホール(写真:NHK)
ステージで熱唱する長谷川さん(写真:NHK)


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!